FNC製作ドラマ『Click Your Heart』が見せたWEBドラマの可能性。

FNC EntertainmentがオリジナルWEBドラマを製作する、というニュースが報じられたのは、約1か月前。AOAのミナと新人育成グループであるNEOZ SCHOOLのメンバーが主演を務める、というくらいでそれほどの注目はしていなかった。しかも2日間で公開される短いストーリーであるうえ、予告編を見れば、AOAのメンバーやイ・グクジュ、チョ・ジェユンなど顔ぶれはFNC所属アーティストばかりで、まるで「自主製作」みたいだ、と思うほどだった。

だが、17日に1話がNEVERやVアプリなどで公開され、予告がSNSを通じて公開されると「これはやるな」と思わせられる展開になった。正直、ストーリーや設定というドラマとしての質はそれほどでもないが、WEBという特性を生かしたドラマ製作方法に少し驚かされるとともに、最近台頭してきたWEBドラマというジャンルの可能性に目を引かれた。


恋愛ドラマといえば、ひとりの女の子と数人の男性。結末は一人の男と結ばれるというのが定番。ストーリーが1本だから当然なのだが、視聴者にしてみれば主人公の男ではないキャラクターに惹かれるという人も多い。たとえば『花より男子』の花沢類(韓国版ではキム・ヒョンジュンの演じたユン・ジフ)や、『美男ですね』でジョン・ヨンファが演じたカン・シヌなど。彼らを主人公にした二次小説が未だに人気があるように「第二の男」であった彼らのファンは多い。だが『Click Your Heart』はそんなファンの気持ちに応える可能性を持った構成になっている。


最初に公開されたのが「プロローグ」。ここでヒロインのミナ(AOA)のキャラクター紹介と4人の男(ロウン、ダウォン、チャニ、ジュホ、いずれもNEOZ SCHOOL)が紹介される。次にAパートが公開。ロウンとダウォンに関わるストーリーだ。そして、「ロウンエンディング」のA1パート、「ダウォンエンディング」のA2パートが公開され、それぞれ違うストーリー展開となる。同じようにBパートではチャニとジュホのストーリーが展開され、「4人4色」のキャッチフレーズの通り、4パターンのストーリーのあるドラマが公開された。

各エピソードのオープニングとエンディングは、まるで恋愛ゲームの選択画面のようで、「クリック」というタイトルもゲームを意識したものと思われる。だがいわゆる「マルチエンディング」のドラマはWEBという媒体をうまく利用して作られたという点で注目される。今回は単純に4つのストーリーを配信しただけだが、例えばSNSを使って投票形式にして、人気のストーリーを構成していく、というような視聴者参加型のドラマも可能だろう。


最近韓国ではドラマの新しい放送媒体としてWEBの成長が目覚ましい。ドラマに限らず地上波では「誰もが見る」番組しか制作されない風潮が濃くなり、製作費も高額になる傾向がある。『応答せよ』シリーズや『ミセン』『シグナル』などはいずれもケーブル波チャンネルtvNで放送されたもので、他にも多様な表現の出来るケーブル波のドラマの人気が高まってきている。


そこからさらに狭い嗜好の視聴者をターゲットにしたドラマ、たとえばアイドルをキャストに起用したドラマが最近WEBで多く製作されるようになってきた。また放送形態も多様化している。


FTISLANDのチェ・ジョンフン、AOAのユナが出演した『プリンスの王子』(KBS2015年6月)は月曜日から金曜日の夜、約10分ずつのエピソードが配信され、土曜日に1週間分まとめてテレビで放映されるという形式だった。また、BEASTのユン・ドゥジュンが主演した『ポンダンポンダンLOVE』(MBC2015年12月)も同様の配信→TV放送という形態だが、今月にはWEBの累計再生回数が1000万回を超え、WEBドラマに新しい歴史の一歩を刻んだと言われている。

もっとも、ドラマ制作という点では地上波、ケーブル波とも変わらない部分も多く、ギャラ未払いの実態もあったりする。だが、新しい媒体に既存のドラマ製作現場が刺激されるのは悪いことではないだろう。


’’ドラマ大国’’韓国の「WEBドラマ」。これからどんな成長をしていくのか、楽しみに見守っていきたい。

(写真:FNC Entertainment 公式Facebook、KBS、MBC)

(Text by Yuki.A)



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